沖縄のどうしようもない貧困を見てきた。基地問題よりも経済を優先する候補者が当選した時も「仕方ないか」と思ったものである。しかし昨年9月の知事選は違った。
県知事候補の一人、佐喜真氏が市長をしていた宜野湾市は財政難にあって職員が不足している、といった話が耳に入ってきていたのである。
そして昨年、1989年から長年開催されてきた「ぎのわん車いすマラソン大会」が宜野湾市社会福祉協議会の人手不足などが理由で中止となった。2020年に東京パラリンピックを控え、沖縄にはメダル獲得が期待される有力選手もいる。この絶好の機会に、イベントを盛り上げることが出来ないばかりか中止となったのである。基地問題を抜きに考えても佐喜真氏には任せられないと感じた。
県内外を問わず、世間では基地問題ばかりが大きく報じらていたが、私の周囲では判断基準はそればかりではなかった。
ある知人は「今回はデニーに入れる」と言っていた。理由は公約に掲げている「通学バスの無償化」だという。「実現しないかもしれないけれど、もしそうなったら助かるさ」 2人の子供を持つ父親はそう語っていた。一方の佐喜真氏が掲げていた公約「携帯電話料金4割削減」については「絶対に実現しなさそう」と感じたそうだ。
手取り15万円前後で働く30、40代も少なくない沖縄。基地問題は近すぎて、あまりに遠い。
基地問題を語るとき「アメとムチの構図」とよく言われる。この構図が成立する条件は「貧困」だ。沖縄が揺れ続けてきた根本的な原因は「貧困」であるのかもしれない。今回の県民投票はどう揺れるのだろうかと、気がかりでならない。