キース・リチャーズKeith Richards

昨年、ローリング・ストーンズが新しいアルバムを発表した。ロックナンバーとお得意のブルーズナンバーで構成されており、今までと大差がないとの評価もあるが、それでも私はストーンズのアルバムで何が好きかと聞かれたら、迷わず一番新しいやつと答える。ただしブライアン・ジョーンズの生きていた60年代のものを除いてだが。

それにしても40年以上もの間、変らず音楽を続けることは想像も出来ない。私自身、親の影響もあって、古い音楽を聴いて育ち、そしてそれらを好きであったのだが、生まれて初めて自分で好きになったバンドはストーンズであった。11歳か12歳の頃である。その頃はWE ARE THE WORLDがあったこともあって、洋楽の世界が元気であった時期でもある。ストーンズやポール・サイモン、ジョージ・ハリスンなどのベテランから、U2,ボン・ジョヴィ、プリンスといった若手まで幅広い世代のミュージシャンがヒットチャートを賑わせていたものだ。日本でもラジオで毎週末にはアメリカのヒットチャートを放送していたし、テレビでも洋楽の番組が放送されていた。当然私はそれらに夢中になり、中でもストーンズ、特にキース・リチャーズの発言に影響されていた。キースこそストーンズと思っていたからだ。

キース

私の出会った芸術は、そのすべてがキースから始まったといっても過言ではない。ある日のインタビューでキースが最近の若手のミュージシャンンで好きな連中は?と聞かれ、迷わずこう答えた「U2がいい。あとINXS。大スターになる人ではないがスプリングスティーンも好きだな」と。そこで私はU2に夢中になった。高校に入る頃にはスプリングスティーンやINXSもよく聞いていた。ブルースの先駆者ロバート・ジョンソンの名もキースから聞いた。「彼のギターはまるで、バッハを聴いているみたいだ」と。私が出会った芸術はすべてキースから派生している。つまり私の哲学の根源はキース・リチャーズなのである。

そのキースが数年前のインタビューで「俺たちは今でも反体制なんだ」と言っていた。ミック・ジャガーが勲章を授与されたのはその直後のことだ。当然キースはストーンズの精神に反してやがると大激怒。そのニュースは日本でも報道された。私自身、これは今度こそ解散かも知れないと思っていたら今回の新作が発表された。しかしよくよく考えてみれば、キースがミックと縁を切ることはまずありえないのだ。小学校の頃から同級生であるサイモンとガーファンクルも再結成しているが、ミックとキースの場合はもっと古い付き合いだ。何しろキースが始めてミックを見たのは、ミックが砂場でバケツを持って遊んでいた頃なのだから。「ミックとは4歳のとき公園の砂場で出会ったんだ。小さなバケツを持っていたっけ。今も何も変らないよ」つまりミックとキースのごたごたは4歳児の喧嘩と考えてしまえばいい。

最新アルバムが今までと大差ないと評価されていると冒頭で書いた。しかし私はそうは思わない。確かに作曲などはこれまでと大差がない。しかし、最近のストーンズは、特にボブ・ディランのLike A Rolling Stoneをカバーした頃から変化しているのである。それまではロックの先導者的役割を果たそうとしていたようにも思えるのだが、そうした緊張感が見られないのだ。ヒットすることは望まず、好きな音楽をプレイしているように思える。これまでは「俺たちはまだまだ止まらない」といった自己主張が垣間見えたような気がするのだが、最近はそれがなく、むしろ爽快でさえあるのだ。そして私は、新たなストーンズに出会うたび、原点に帰ることが出来るのである。

RollingStones.com home