個人的な英語の掟17条

私は一応、英文科を卒業している。そこで今回は私なりの英語知識を忘れてしまう前にご披露してみようと思う。ここに書くほとんどの事は、私が実際に留学生相手に使ってしまった間違い英語なので、日本国内で英語を習得してから英語圏に行こうとする人にとってはなかなか役立つ知識になるはずである。逆に帰国子女などには全く無意味なものである。

can=be able toではない
明治の頃、日本では英和辞典の作成に必死であった。その頃、項目の両者はどちらも「可能」と訳してしまって問題なかったのである。同じ訳なので同じ意味とされたが、いかなる場合も同じ意味ではない。未来永劫の可能がcanで、be able toは一時的な可能をに使用するのが通例である。例えば全くアルコールを飲めない人が、酒は飲めない、という時にはcanを使用し、I can't drink.となる。ここでbe able toを使用するのは不自然だ。
will=be going toではない
これも明治時期よりの誤解である。どちらも未来を指すのだが、同じ未来を表さない。willはどちらかといえば遠い未来を指し、be going toは近い未来を指す。さらに、その未来が決定的であるのなら、willではなくbe going toを使用する。「明日は学校に行く」の場合はbe going toが適当で、小さな子供が「僕、医者になるんだ」と言うのにはwillなのである。
「座ってください」
中学生のころ、授業前の号令で、英語の教師がPlease sit down.と言っていた。Pleaseがついているので丁寧な言い方だと思っていたら大間違いである。海外からの来客など、国際的な場で日本人が誤って使ってしまう可能性が最も高い言葉である。これを訳すと「席につきなさい」という半ば強制的な表現なのだ。だから、中学の先生は偶然なのか意図してなのか分からないが間違ってはいない。もし、「お座り下さい」と丁寧に言うのであればPlease have a seat.というのが適当であろう。
Would you mind~?
丁寧な依頼文として知られているが、時と場合によることを忘れてはならない。Could(Would)you~?よりも丁寧な表現であって、目上の人に使う言葉として教わる。だが、相手がやってくれて当然である依頼の場合は、たとえ相手がどんなに目上であってもWould you mindは使うべきではない。電車の中で足を踏まれていたら「足をどけてくれない?」と普通に言えばよく、丁寧に言ってしまうと「申し訳ございませんが、足をおどけになってくれませんかねぇ」となってしまい嫌味たっぷりになってしまう。勿論社内で嫌いな人に向かってならそれも良いだろうが普段は使わないほうがいい。だが中学のときの先生は「こっちが丁寧だから、こっちを使っていれば間違いない」と言っていた。腰の低い日本人が扱う奇妙な英語の一つである。私は、日本で最も有名な元外交官の女性が結婚する時、彼女のアメリカの大学時代の友人のインタビューを見たことがある。一部通訳されていなかったが友人は間違いなくこう言った、「彼女が使う英語はものすごく丁寧で・・・そう、必要以上といってもいいくらいに・・・礼儀正しい人だったわ」と。礼儀正しい日本人ほど誤用してしまいがちなのだ。
You'd better~
「~したほうがいい」という言葉で、中学生の頃に習う。だがこれでは不十分で、不十分なまま大学生を終えてしまう。確かに「今日は傘を持って行ったほうがいいよ」等の場合はこれで構わない。不十分なのは場合によっての訳し方である。例えば同僚に向かって「早くその仕事を終えたほうがいい」という意味で使った場合「早く仕事を終えたほうが身の為だぞ、さもないと・・・」という脅迫的な言葉になってしまう。「このことは他人には言わないほうがいいよ」という場合も同じである。「誰にも言わないほうが身の為だ・・・」となるからである。映画での脅迫電話のシーンを注意深く見ているといい、この言葉が多用されているはずである。「忠告」と「脅迫」の意味を持つことを頭に入れて使用しなければならないのだ。
For your informationの誤訳
日常では使用しないであろうが、会議などで日本人が頻繁に使用してしまう言葉である。「念のためにお伝えしますが・・・」という意味で使用しているようなのだが、正確には「一言注意しておきますがね・・・」という意味である。相手に釘をさすときの言葉なのだ。これを使用してしまうと「あの日本人、態度がでかい」と思われてしまうし、場合によっては「喧嘩を売っているのだろうか」と思われることもあるので使わないようにすべき言葉である。もし丁寧に伝えるのなら、頭にjustをつけてJust for your information.が適当であろう。
「論理的に考えてみましょう」
これを英訳してくださいと言われたら、あなたは何を思いつくだろうか?私の場合はPlease be logical.であった。しかし、これは相手の非論理性を直接非難していることになるのだ。「あなたは論理的じゃない。もっと論理的に話をしなさい」というニュアンスである。実のところ論理的という言葉を使用することは控えたほうが良いらしく、Let's look at this closely.(詳しく検討しましょう)などというように客観的に相手を議論に集中させることのほうが多いようである。
be willing toの誤訳
高校か中学で習った熟語である。「すすんで~する」「快く~する」と習った人が多いであろう。私もそうだった。しかし、実際は違うのである。例えば「君のレポートは僕が書くよ」と笑顔で快く引き受けるのなら、I'd happy to write your report.とするのがベスト。be willing toは決して快くではなく、正確には「交換条件つきで何かをしてあげる」時に使うのである。これをネイティブに向かって使うと、相手は反射的に「条件付か」と構えてしまうのだ。
my friend
オーストラリアからの留学生とキャンパスで会話していて、晩飯どうだ?と誘われ、「これから友達と会うんだ」と断ったときに私は、I am going to meet my friend.と言ってしまったのである。これはちょっとした顰蹙である。my friendを使用してしまうと、「私の友人」の中でも「私の」の部分が強調されてしまい、今会っている相手は友人ではないと言っていることになってしまうのである。であるので、I am going to meet a friend.とするのが普通である。
OKじゃないIt's okay.
例えば調子を尋ねられてこの言葉を返事したら、多分相手は「あんまり良くないのか・・・」と心配してしまうかもしれない。日本語ではOKは全く問題ないようなニュアンスで使われるのだが、英語圏では異なるのだ。実際には「どうにか大丈夫」だとか「こんなもんだよ、贅沢言えないし」といった使われ方なのである。であるので時と場合に合わせて、great、nice、goodなどを使用する習慣を持たないといけないのである。
注文する際のto
レストランで注文するとき、I want order!と言うとかなり恥ずかしい。しかし、そういう日本人が多いと聞かされた。正しくはI want to order!というようにtoが必要なのだ。もしtoなしで言ってしまうとそれは裁判官や議長が良く使う「静粛に!」となってしまう。toだけの違いなのにとんでもないことである。
knowの落とし穴
ジョン・レノンを知っている?とknowを使って留学生に尋ね、No, do you?と逆に聞かれ、お馬鹿にも私はOf course!と答えてびっくりされたことがある。確かに私はジョン・レノンの曲は全部知っているが、knowを人について使うと「懇意にしている」「知り合いである」となるのだ。勿論私はジョン・レノンに会った事すらない。こういう場合はDo you know who John Lennon is?(ジョン・レノンが誰だか知っている?)と聞くのが適当なのである。意外と英語は横着が出来ないのだ。
飲みに行くとき
研究室の連中と、ちょっと飲みに行こうとなって、留学生を誘ったのである。そのとき私はLet's go drinking.と言ったところ、相手はものすごい気合の入った表情で、私の肩を叩きながら「勿論!」と言ったのだ。どうしてかと思い後で聞いたら、私が言った言葉は「酔っ払うまで浴びるほど飲もう!」という意味合になってしまうのだ。つまり相手は「こいつ何かあったな、とことんつきあってやろう」と思ったのだ。ちょいと1杯は、Let's have a drink.が適当なのである。
日本人の目の色
場面をはっきり覚えていないのだが、日本人の目の色は人による違いが少ないとかいう話になり、確か大学の後輩でしかもその後職場で同僚になった女性がblack eyesとかなんとか言ったのである。その瞬間に留学生諸君が「え?」という顔をしたのだ。I have black eyesともし言ったら、それは「私は目の周りに青あざがある」となってしまうそうだ。つまりdark-brownなどと表現しなければならないのだ。日本人は英語で黒い瞳と言ってはいけないのである。
陸上のフライング
あまり使わないのだろうが、私は陸上をやっていたので「200mではよくフライングしてしまって・・・」と言ったことがあり、それ以来私が最も得意としていた種目は200mと思われてしまったのである。実はフライングは「飛ぶように疾走している状態」なのである。スタートのフライングはfalse startが正しい。
ボールペンとシャープペン
どちらも和製英語である。しかも「ボールペンとって」と依頼すると、ハンマーと勘違いされてしまうのだ。カタカナ英語でのボールペンという発音はball peen hammer(頭の丸いハンマー)のball peenに聞えてしまうようである。ボールペンはball-point penでシャープペンはmechanical pencilである。覚えておいて損はない。
不良はヤンキーではない
不良に向かってヤンキーというとアメリカ人は激怒するであろう。ヤンキーとはアメリカ人のことだからだ。アメリカがイラクで戦争を始めた時、米兵はイスラムのしきたりも知らないと非難されたが、我々もアメリカの常識をそんなに知ってはいないのである。日本国内で「あいつヤンキーだから」というのは、言う側も言われる側もあまり褒められたものではないのだ。

17条にしたのは書き出したらきりがないからである。しかしネイティブと話をすると、いかに自分が習ってきた英語がデタラメだったかを誰もが思い知る。それは大抵、中学レベルの英語で、我々の一般常識なのである。ゆとり教育だとか教育基本法の改正だとか言う前に間違いをなくして欲しいと思う今日この頃である。