泡瀬干潟について
「これはもうどうにもならない・・・」
目の前の光景に、真っ先に浮かんだのはその一言だった。
昨年11月、泡瀬干潟の埋め立て事業(この事業は、泡瀬干潟の一部を含む約187ヘクタールを埋め立てて人工島を造成し、ホテルなどを建設して商業地域にしようというものである)について、那覇地裁が「経済的合理性を欠く」として、沖縄県知事と沖縄市長に公金支出の差し止めを命じる判決をだした。しかし今年の1月15日、判決を無視し土砂が投入された。この映像は全国規模で報道されたので記憶に新しい。
その翌朝、私は泡瀬の埋め立て現場を見に行ったのだ。付近には環境保護を訴える人々が数名、工事反対を訴える垂れ幕の付近で、着々と進む工事現場の撮影を行っていた。
報道では土砂を海に投入する光景ばかりが大きく映し出されていて、その全体はあまり報じられていなかった。すでに人工島は一部なのであろうが、それでも広大な輪郭を見せており、人工島までの長い橋を工事のトラックが引っ切り無しに出入りしている。
今ならまだ間に合う、という声も多いが、この光景を前に、私は工事を中止しても、もう元の海には戻せないだろうと、真っ先に感じたのである。
2007年12月に東門美津子沖縄市長は1期の計画見直し、2期の推進困難を表明。那覇地裁もこの表明を元に、差し止めの判決を下した。とは言うものの、沖縄市議会はその前月の11月末、第1区域(約96ヘクタール)の埋め立てを容認する方針を固めている。市議会はすでに泥沼化していたに違いない。今年1月の土砂投入に関して取材を受ける東門市長は、一期工事が大部分進んでいることを理由に、「埋め立て中止はいまさら難しいのでこのまま続行。二期工事は今後の経済情勢をみて検討」と答えている。この発言を私は沖縄市の司法無視宣言と捉えた。
さらに沖縄県の男性職員へのインタビューで、「裁判所が行政に介入するのはどうか」などと答える場面が報じられ、その馬鹿さ加減に呆れ返ったものである。
さて今月15日、2審判決が福岡高裁那覇支部であり、河邉裁判長は、「現時点で経済的合理性を欠く」として、知事と市長に公金支出の差し止めを命じた一審・那覇地裁判決を支持し、県と市の主張を退けた。これに対して、東門市長は「厳しい結果が出たことは理解している。早急に判決文を読み解き、県、国と話し合って方針を出し、記者会見などで市民にも話したい。(上告するかは)申し上げられない」としている。またしても司法を無視するのか、という不安がよぎる。
今ならまだ間に合う、とは思えないが、助かる部分がおよそ半分あるのもまた事実だ。市と県、そして政権交代したばかりの国の判断に注目したい。
1月の泡瀬からの帰りの車中、一台の車が私の後を執拗につけている事に気づいた。その車はフロントガラスのサンバイザーを下ろしていたのだが、そこに無言のメッセージがあった。日の丸である。