米国で同時多発テロが起き、自衛隊のイラク派遣が問題となった国会で「日本国内も例外ではない」という声があったと記憶している。起こるかどうか解らないテロで、憲法を軽視してまで派遣したのである。そして起こってしまった、8月13日の米軍ヘリ墜落事故。事故というが被害を受ける側にはテロと大差はない。これは米軍による公然たるテロリズムである。起きてしまったにも拘らずその対応は9.11とは異なる。日本政府も加害者であるからだ。今、安保条約を見直さなければ、最悪の事態は間違いなく起こるであろう。国内でのテロよりも確立は高い。
私を含め、県民感情は「怒」と「恨」に支配されている。だがこれらを超えたところに真の理性はあるのではないだろうか。9.11と8.13とで全く対応が違う政府を、今、変えねばならないのである。我々の感情もまた、急がねばならないところにある。
上記は、今年9月1日に、沖縄タイムス紙に掲載された私の文章である。それなりに反響があったのだが、何しろ原稿用紙1枚という制限つきなものだから、真意が伝わらず、それが反響に繋がったようにも感じている。そこで今回は、この補足を述べることとしたい。
私は、8月13日の沖縄国際大学で起きた米軍ヘリ墜落事故を「米軍による公然たるテロリズム」であるとし、日本政府も加害者であると述べた。これはそのまま受け止めていただいて構わない。米軍基地が沖縄県にのみ集中し、それを認めてきたのは他でもない日本政府、そして日本国が民主主義国家であるというのなら、日本国民である。
沖縄県での米軍機による事故は、多数起きており、今回に限ったことではない。ヘリ墜落事故は、沖縄県外の良心的な眼から見れば、「大変なことが起きたな」と捉えられるのであろうが、沖縄県内の眼では、「ついに市街地に落ちてしまった」という捉え方になる。もっとも、この墜落が大学の敷地内ではなく、海上や空港内であれば、これまでの前例から、これほどの騒ぎにはならなかったであろうことは容易に推測できる。政治家や報道関係者には、「大学に落ちた」ことが衝撃的であり、公表するに値する話題性は十二分にあると判断されたのであろう。
自ら、多少なりとも騒ぎ始めたのだから致し方ない。これまでの沖縄米軍基地問題の取り上げ方とは異なる対応を、内閣が始めている。といっても、米軍側が基地再編の動きを見せていただけに、時期が重なってしまったとの見方も出来、再編とヘリ墜落事故とでは、根本的な論旨は異なるようである。いずれにしても、問題となるのは普天間基地を始めとする在沖米軍施設の移転先だ。
移転先として問題となっているのが辺野古である。沖縄本島中北部に位置しているのだが、基地設立反対運動が地元住民により行われている。だが、辺野古など候補にも上がっていなかったかのように、下地空港の臨時利用が検討され始めた。宮古諸島の下地島には、民間航空の訓練用滑走路を持つのである。検討され始めた、と書いたが、沖縄事情に詳しい人から見れば、「やっぱり下地か」という思いであろう。沖縄県と日本政府との間で、下地空港の軍事利用は行わない、という約束があるにも拘らず、数年前、同空港を自衛隊に利用させるなどという話があったし、米軍機が、全く突然、給油目的で着陸したこともあった。また、同空港を、台湾や中国に対する絶好の拠点、と発言した米軍関係者がいたと記憶している。すべてここ3、4年以内のことであったはずである。
辺野古への移設は勿論、私は日本国内に米軍基地も自衛隊もいらないと考える人間なので、下地空港などもっての他であると感じている。下地空港は、訓練用なので、1回も離着陸が行われない日もある、のんびりした空港である。農民から土地を強引に買い上げて建設された空港と聞いているが(真実の程は詳しく解らない)、軍事利用を拒み続けてきた空港である。下地島には、渡口の浜という長さ800メートルに及ぶ美しいビーチがある。また、魚垣と呼ばれる、海中に小石を積み上げ、潮が引いた時に取り残された魚を捕るという、文化財指定の伝統漁業が残されている。それにダイビングを本格的に趣味にしている人にとっては憧れの島である。というのも、通り池と呼ばれる2つの池があり、この2つの池は地下で海とつながっていて、湖の底は海水、上層部は淡水となっており、潜って底から見上げると、塩の濃度の差で美しく見えるというのだ。ただし、事故が多く、上級者にしか潜ることが許されないポイントなのである。
なぜ、このような島に臨時とはいえ、米軍が行かなければならないのか、私には理解できないのだ。今、私は普天間基地の近くに暮らしているが、米軍機の飛行と、米兵の街への繰り出し方は、尋常なものではない。先にも述べたが、私はどこに移転するにしても反対である。最近、旅客機が東京上空を深夜低空飛行したとの報道があったが、普天間では、米軍の大型輸送機が連続して、深夜12時過ぎに超低空飛行をすることも珍しいことではない。勿論、市街地上空であり、目視の限りでは、明らかに東京タワーよりも低い高度である。掲載された記事の中でも述べたが、今は、移転先を考慮する時ではなく、「安保条約そのものを見直さなければ」ならない時期なのである。私の言う「最悪の事態」とは、沖縄県内のことだけではない。沖縄県内で、これだけ事故を起こしてきたのだ。どこにいっても事故は起きるし、米軍は、兵隊の余暇なるものを必ず考慮して移転先を決定するであろうから、繰り出す街が近くに無いところに行くはずも無い。米軍基地を移転させても、何も終わらないのである。
確かに、沖縄にのみ米軍基地が集中するのは、不公平の極みである。しかしだからこそ、我々沖縄県民は、「怒」と「恨」を乗り越えて、真の理性を持たなければならないと考えるのだ。何故なら、軍隊というものは、そこに在るだけで、「公然たるテロリズム」になりえることを、我々は知っているからである。