普天間の行方と横田基地
普天間の移転先が今まさに話題になっている。2、3ヶ月前から、当サイトの読者からも「普天間について書いてくれ」という内容のメールをいくつか頂戴していたのだが、どうにも書けないでいた。というのも、以前「2006夏・沖縄米軍事情」という記事を掲載したのだが、移転先候補が変わった程度で、実情はその頃と大差ないのである。そこで今回は4年前とは少々視点を変えて改めて基地問題について述べてみたいと思う。
先ずはじめに断っておくが、普天間は返還されるべきであり、その移転先など必要ない、というのが私の考えである。そもそもこれほどまでに米軍を駐留させなければ維持すらできない安保条約そのものを見直すべきである。敗戦国という立場で締結した条約ではあるが、戦後65年も経過しているのだ。安保が不要であるとまでは言わないが、その形容は変化させなければならないと考える。そしてそれは「軍縮」という方向性が望ましい。
それでは現実に目を向けてみよう。普天間の移転先についての報道を目にするたび感じるのは、アメリカが望まないであろう、ということである。沖縄には大規模な米軍居住区が存在し、軍事病院もあれば、ハイスクールやショッピングセンターまでもが基地内にそろっている。沖縄県内の移設には勿論反対なのだが、仮に徳之島に訓練の一部を移設し居住区はそのままとすると、米軍は沖縄本島から徳之島まで飛行し、訓練を行い、また沖縄本島に戻るのである。勤務としてはなかなか過酷だ。アメリカがなぜ沖縄県内の移設を望むのか、米国の立場からの理由がほとんど報じられていないように感じる。仮にもし、報道されていない水面下の交渉で、米国側から「居住区と施設に近い区域への移転が望ましい」と要望があり、弧琉球の徳之島を候補としたのであれば、日本政府の見解が甘すぎると言える。いずれにしても、普天間基地の移設先は、全部か一部かは分からないが、沖縄県内になってしまうであろう。
徳之島、及び沖縄で、大規模な移設反対集会があったことは記憶に新しい。徳之島の住民は、実際に自分たちが暮らす場に基地が移設されるかもしれないと言われるまで、反対も賛成もなかったことだろうと思う。同様に、日本国民の多くが、わが身の問題としては捉えていないはずだ。しかし、徳之島の集会は見ていないのではっきりとしないが、沖縄での基地反対集会には、県外からも多くの人が訪れ、それぞれの所属する旗を掲げる。私はその光景を見るたびに思うのだ。なぜ沖縄までわざわざ来るのかと。国会議事堂の目の前でやってくれたほうが効果的だし、何より彼らの負担も少なくて済むだろうにと。
沖縄県外から沖縄へ反対運動のためにやってくる人が多いことの理由は、おそらく、米軍基地=沖縄という公式が成り立っているからである。確かに米軍基地はその75%が沖縄に集中し、沖縄では「日本人は沖縄に基地を押し付けて平和に暮らしている」という不満の声も聞かれる。嘉手納も普天間も住宅街の中にある危険な軍事空港である。しかし反対運動で沖縄に来る人、そして沖縄の基地問題を我が身のこととして捉えられない人、そして最後に沖縄の人々・・・多くの人が忘れている、或いは知らないのだ。東京の住宅街のど真ん中に、普天間基地より大きな空港を持つ横田基地の存在を。
冒頭で私は「4年前とは視点を変えて」と述べたが、このことこそがまさにそれである。沖縄の米軍基地問題が注目されればされるほど、横田基地の存在と地元住民の苦しみが、忘れられているように感じるのだ。マスコミや政府が今関心があるのは「沖縄の米軍基地問題」であって、「米軍基地問題」ではない。であるので、移設先の問題から、安保条約はどうあるべきか、という議論にまで発展することがない。
私が知る限り、沖縄県民の多くは横田基地が東京にあることを知らないはずだ。勿論、横田基地が普天間基地より大きな滑走路を持つことや、在日米軍の司令部まであり、嘉手納基地より格上の存在であることを知る人も少ないであろう。何故そう言い切れるかと問われると、沖縄の新聞記者も含めて、知っている人に出会ったことがないからだ。
横田基地の近く、神奈川にある厚木基地では、周辺住宅に米軍機が墜落する事故が過去3回あり、一般市民が計12人死亡している。横田、厚木どちらも、騒音被害は沖縄の米軍基地と大差ない。周囲が海に囲まれている沖縄と違い、内陸にある基地で、人口も多いことからその危険性も高い。
ついこの前の4月29日、毎日新聞の記事にこのようなものがあった。
都と米軍横田基地の周辺6市町で作る「横田基地に関する東京都と周辺市町連絡協議会」は28日、米海軍が5月に予定している夜間発着訓練(NLP)に関し、騒音被害などが予想されることから、横田基地で実施しないよう国と米軍に要請した。 都によると、米海軍は5月5~15日に硫黄島でNLPを実施予定で、12~15日に硫黄島が悪天候などで訓練ができない場合、横田基地と厚木基地(神奈川県綾瀬市、大和市)で代替訓練を行うとしている。 協議会の担当者が27日、両基地に中止要請の文書を手渡した。要請は「人口密集地での訓練で周辺住民の生活環境がさらに損なわれる。ひいては日米友好関係にも悪影響を及ぼしかねない」と主張している。
こうした記事を見ると、東京都での基地問題なのだから、もっと注目されても良いと思うのだが、大きくは報じられていないようである。
普天間基地を見たことがないから、想像ができない、実感がわかない、と言う方で関東にお住まいなら、是非横田基地を見てもらいたい。そして私が願うのは、「沖縄の米軍基地問題」ではなくて、「米軍基地問題」として、日本全国で論じられることである。
先にも述べたが、普天間基地は恐らく沖縄県内に移設されるであろう。この悔しさは到底言葉にできるものではない。しかしそれを押し殺してでも私は、日本全国で安保条約について考えてもらいたいと述べるのだ。新たに作られる軍用基地は、古くなるまで、半世紀は活用されるであろう。安保条約そのものを問う方向性に持っていかないと、戦後100年以上経っても米軍基地は沖縄は勿論日本全国にあり続けることになるのだから。